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朝日新聞の社説から 

 上田薫先生(元都留文科大学学長)が「個性生きてこそ総合学習」というタイトルで総合についての考え方を書かれています。全ての学習に共通する大切な考え方であると思っています。以下、引用します。


          個性生きてこそ総合学習
 教師たちの関心がいま、今春から小中高校に導入される「総合的な学習の時間」に集中している。総合学習は新学習指導要領の目玉で、教科の枠を超えて子どもたちが自ら学び考え解決する能力を育てることを目指している。だが、もし総合のとらえ方に錯誤があるとすれば、事は重大である。それは教育方法の問題である以上に、民主主義教育の根幹にかかわることだからである。

 1947年に戦後新教育が発足した時、最も注目された新設の社会科は、まさに総合の立場をとるものであった。文部省で当時、社会科の学習指導要領作成にかかわった私は、教師たちのひたむきな情熱を昨日のことのように思い起こす。そこには日本人の未来をそれにかけようとするのっぴきならぬ思いがあった。

 その社会科が、経験主義の問題解決学習という肝心の筋をあいまいなものにしながら、暗記物的な色彩を強めた背景には、五五年体制下における政治の教育支配があった。学習の過程をおろそかにして結論ばかりを強いられては主体的思考など育ちようがない。だが一方で教師が、いや日本人が知識を抽象的に分析的に扱うことだけに慣れて、具体的な総合的把握を苦手にしたことも大きかったと思う。

 私は社会科のあり方に危機を覚え58年に現場の教師たちと「社会科の初志をつらぬく会」を結成した。今も会長として研究を続けている。

 日本の教育界は、とかく大切な本質のことより表面の形に心を奪われ、流行に堕しやすい。総合学習がスタートする現在も、どんなカリキュラムにすればということばかり追いかけているのである。

 そもそも総合という働きは、痛い思いをあえてして、自分の安定を犠牲にすることだ。自分の考えや発見を未知の現実にぶつけて謙虚に思考することだ。それでこそ生き生きした人間理解・社会理解が成り立つ。

 もちろんそのためには、自分に個性のある主張が確立されていなければいけないが、その上に鋭い思考力と豊かな視野が加われば、よき総合が生まれる。そういう要件をしっかり満たすことを考えぬまま、ただ国際理解だ環境問題だと、かっこよく叫んでみても始まらない。まして物まね的な授業では、総合はむなしく空振りするだけである。

 総合学習に熱を上げている人たちが、学級崩壊をはじめ多くの難問に少なからず冷淡に見えるのは不思議である。総合が子ども各自の主体性を大事にし、思考力と視野を充実させるものであってこそ、現在の教育の窮境打開のかぎとなることができるのである。しかもそれは、子どもに民主主義を推進しうる力を養うかけがえのない貴重なことでもある。

 学校は今困り果てているのに、どうしてこの大切な視点がおろそかになっているのか。個性を重んじ、一人ひとりを大切にせよという掛け声は、単なる空文に過ぎないのか。

 私ははっきり言いたい。個への理解を深めようとしない学校には、総合学習を進める資格はないと。逆に、すでにその点で実績をあげている学校は、今さら無理にカリキュラムを動かしたりする必要は全くないと。真剣に着実に子どもを生かそうとしてきた学校の指導は、そのまま立派な総合だからである。人間が世の中の問題に正対して生きることこそが総合なのである。

 教師たちが勇気と愛情をもって、子どもの人間性に具体的な視点をすえることができれば、総合への道は確かだ。一人ひとりが異なっている、その個をまともに生かそうとしていれば間違いはない。そのことに長年月取り組んでいる学校は、現にいくつもあるのである。

 戦後新教育では各地の学校が独自のプランを林立させたが、今の学校はどうであろう。むろん功を焦ってかっこよさを競うのは無意味だ。おのずからにして、子どもたち、教師たち、学校自体からしみ通るようにわき出てくるものがほしい。人間にとって総合とは、もともとそういう性質のものなのだ。

 子どもの前ではっきり自分の不完全を意識できる、人間理解の深い教師によって、総合が起死回生の道を開いてくれることを切に願っている。日本人がここでまた総合につまずいたら、もはや前途は暗いといっても言いすぎではない。
                             (上田薫 元都留文科大学学長=投稿)

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第6回奈良・個を育てる教師の会(ホテルサンルート奈良) 

「ぼく・わたしたんけん大研究」(2年・生活科実践発表)

 谷岡義高先生(奈良女子大学文学部附属小学校)「一年星組のしごと学習」、阪口健治先生(富田林市立高辺台小学校)「戦争の授業」も実践発表をされました。「奈良・個を育てる教師の会」での初めての実践発表です。谷岡先生、川合春路先生(大阪樟蔭女子大学)、近藤久史先生(神戸女子大学)、岡埜元江先生(前奈良育英小学校)、守屋淳先生(姫路工業大学)、小島律子先生(大阪教育大学)など、多くの先生方から、多くのことを指導していただきました。

校内授業研究会(三原町立市小学校) 

「ジャパンフローラ2000の秘密」(4年・総合)
 講師:近藤久史先生(神戸女子大学

 地域教材として、この年に開幕された「淡路花博 ジャパンフローラ2000」を取り上げました。社会科学習から「総合的な学習」へと発展できないものかと取り組んだものです。